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航空事情ミニレポート

 

アルファーアビエィションがお届けする航空に関する豆知識


#55 「究極のダイエットに成功した航空機」(2012/8/10)

アルファーアビエィションのベテラン飛行教官が、訓練生でないと聞けない貴重な情報をお教えします。 しっかり学んでください。

「究極のダイエットに成功した航空機」
航空機は1Gの重力を振り切って飛行する乗り物ですが、そのためにかなりの制約を強いられることになります。
最も重要なことは軽量に且つ十分な強度を維持できるかということです。
軽量になればその分、高く・速く・より遠くへ行くこと ができるし、運搬する荷物や人員の重量を増やすことも可能になります。

初期の航空機は機体の構造部材に布や木材を使用してい ました。
第二次大戦時の戦闘機でも主翼や尾翼に木材を使用していた物もあります。
現在はどうかというと金属やプラスチックで機体は形作 られています。
強度の必要な部分には鉄が使用されていますが、大型・ 小型機にかかわらず、大半はアルミニウム合金(以下アルミニウム)が使用されています。
アルミニウム合金の最大の特徴はその軽量さにありま す。

主要な金属の比重をあげると、
  ステンレス:7.93
  鉄:7.87
  チタニウム:4.50
  アルミニウム:2.68

比重とは、ある物質の密度(単位体積あたりの重量)と基準物質の密度の比のことで、基準物質は水で、通常1としています。
金属材料の中ではかなり軽量な部類に入ります。
アルミニウムは軽くて柔らかく加工が容易ですが、航空機に使用されるアルミニウムは他の金属を混ぜて熱処理をすることで飛躍的に強度を上げています。
ジュラルミンと呼ばれる金属材料がそれです。

このアルミニウムを機体の大半に使用していますが、実際の機体、ロビンソン式R22型ヘリコプターで使用例をあげると、

・機体外板及び構造部材
外から見える部分のおおよそはアルミニウムで、テール コーン、ホリゾンタル及びバーチカルスタビライザ、マストフェアリング、アフトカウル、サイドカウル、燃料タンク、降着装置であるスキッドのスキッドチューブ及びクロス チューブ、機体内部のシートパネルや機体構造のストラクチャーに使用されています。

・ブレード
ヘリコプタの肝であるメインロータ及びテールロータも スキンと呼ばれる表面の部分やスパーという先端の前縁部分にアルミニウムを使用しています。
メインロータのスキンは現在ステンレス鋼になりましたが、以前はアルミニウムでした。
テールロータはアルミニウムの一枚板を2つ折りにして曲げて作られており、その部分がブレードの前縁側になっています。

・エンジン
高温高圧にさらされている燃焼室内のピストン及びシリ ンダヘッドという部分もY合金と呼ばれる耐熱アルミニウムでできています。
ピストンはその頂部で2000℃以上の高温とかなりの高圧を受ける部分ですが、これがアルミニウムでできているのは驚きです。

航空機は必要のない物が一切取り付けられていません。
日本刀のような、無駄を削ぎ落とし、鋭さや質実剛健さを獲得した航空機を実際に目にしてみてはいかがでしょうか。

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